佐藤さんちのふしぎ

童話作家・佐藤さとる と作品たち

こびとたちの小ささ

 「こびと」とひとくくりに言っても、その大きさ小ささは様々ですね。

 アイヌのこびと伝説では、資料によって一寸法師のようなという表現もありますが、3尺(90センチ)、4尺(120センチ)くらい、という表現もあります。*1
 佐藤さんが御父上から引き継いだ本には、7、8寸あるいは3、4寸とあるそうです。つまり9センチから24センチ。*2

 日本神話のスクナヒコナのみことは、描写からの推測で身長数センチ。

 ディズニーの『白雪姫と七人のこびと』のこびとたちは、絵を見るかぎり身長70センチくらいはありそうです。公式設定ではどうなっているのでしょう。

 花と妖精のイラストで有名なイギリスの画家、シシリー・メアリ・バーカーさんの絵では、妖精たちの身長は10センチから20センチくらいなのかな。
 一緒に描かれている植物の大きさをきちんと調べれば、もっと正確な数字を出せそうですが、いまはだいたいの見当で済ませます。

 『だれも知らない小さな国』より数年早く出版されたメアリー・ノートンさんの『床下の小人たち』に出てくる小人たちは、身長が12センチくらいです。主人公のアリエッティの父親について、「12センチの背丈」と書かれてます。*3 英語のインチ表記ではどうなっているんでしょう。
 『だれも知らない小さな国』と同じ年に発表されたいぬいとみこさんの『木かげの家の小人たち』は、『床下の小人たち』の設定を引き継いで物語られているので、こびとたちの身長も同じくらいでしょう。
 スタジオ・ジブリの『借りぐらしのアリエッティ』は『床下の小人たち』を原作としていて、これも身長は同じくらい。
 ただし、岡田斗司夫さんがユーチューブで話してくれたところによると、シーンによってはもっと大きくなるそうです。人間の登場人物と顔を近づけて話すシーンなどをアニメにする都合上、双方の顔の大きさが違いすぎると絵にならないから。(以前に見た動画を見つけられなくて、記憶によって書いてます。)
 あるサイトでは、アリエッティの身長が10センチ、父親が13センチの設定だという情報を載せたうえで、でもやはりシーンによってだいぶサイズが変わって見えるとも。*4

 さてさてそこで、コロボックル。前にも書きましたが、身長3センチですよ。めちゃめちゃ小さい。(もう一度モノサシを手にしてみてください。)先行するこびとたちの中でいちばん小さそうなのはスクナヒコナのみことですが、それでももう少し大きいかもしれない。なぜ佐藤さんのこびとはこんなに小さいのか。

 佐藤さんはどこかで、ノートンのこびとたちのモデルは床下に住むネズミにちがいないけど、コロボックルはと言えば、それはジバチだというお話をしていました(出典が見つからない)。なるほど。佐藤さんの子ども時代、横須賀の逸見の町の裏山で遊んでいて、身近に感じていただろう虫たちこそ、コロボックルのイメージの元。だから3センチなんですね。ジバチというのも、地下に町を作って住むコロボックルにぴったり。
 皆さんはおそらく、『だれも知らない小さな国』のなかでクリケット、コオロギのようだと言われる、すばやい黒い影を覚えていると思います。コオロギもイメージの元のひとつなんですね。村上勉さんも、コオロギとバッタをイメージしていると言っています。彼の描くコロボックルの黒々とした目や大きな足を思い出せば納得ですよね。

 でも村上さんも3センチには苦労したそうで、ジブリアニメと同じく、人間の顔とコロボックルを同じ絵に収める難しさを語っています。彼の証言では、若菜さんのコロボックルも、絵によって20センチを超えて見えることがあったそうで。村上さん自身も「身長、5センチほしかった」と書いています。*5

*1瀬川拓郎『コロポックルとはだれかーー中世の千島列島とアイヌ伝説』p.18、p.20、p.23
*2神奈川近代文学館佐藤さとる展』パンフレット所収、佐々木長左衛門編『アイヌの話』引用。
*3岩波少年文庫メアリー・ノートン『川を下る小人たち』p.114
*4 『借りぐらしのアリエッティ』豆知識まとめ | スタジオジブリ 非公式ファンサイト【ジブリのせかい】 宮崎駿・高畑勲の最新情報
*5村上勉『コロボックルの小さな画集』p.9、p.12、p.45、p.52

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