佐藤さんちのふしぎ

童話作家・佐藤さとる と作品たち

ミサオ姉ちゃん(『ジュンと秘密の友だち』ネタバレあります)

機械屋と電気屋 この作品はふしぎな構成になっています。「紹介」では触れなかったのですが、主人公のジュンはなかなか物語に登場しません。 作品は「ミサオ、という名の女の子がいました」と始まります。ジュンのお姉さんです。その高校二年生の「どこから…

ゴシップあれこれ(『ジュンと秘密の友だち』)

『ジュンと秘密の友だち』というこの作品は、昭和という時代を生きた一人の男性としての佐藤さとるさんの、心のあり方を理解する上で、鍵になる作品かもしれません。 でもまずはゴシップから。 講談社と岩波書店 この作品は、ほんらい『豆つぶほどの小さない…

『ジュンと秘密の友だち』紹介

小学校三年生のジュンの家は、駅からかなりな坂道を上がる丘のなかほどにあります。家には丘の下をのぞき込むような庭があって、そこからもう一段下ったところにも小庭――小さな平地があります。 ある日ジュンは、この小庭に洞穴を掘ろうと思い立ちます。昔こ…

『わんばく天国』の背景社会(ネタバレあります)

もし馨くんが作者と同じ昭和3年の早生まれだとすると、彼は作中で小学三年生ですから、物語の年代は1936年、昭和11年ということになります。翌昭和12年に日中戦争(当時の国内での呼称は日支事変)が始まります。まさに戦争直前の時代。 この年は政…

長編作品記事一覧

『わんぱく天国ーー安針塚の子どもたちーー』紹介 - 佐藤さんちのふしぎ 『わんばく天国』の背景社会(ネタバレあります) - 佐藤さんちのふしぎ 『ジュンと秘密の友だち』紹介 - 佐藤さんちのふしぎ ゴシップあれこれ(『ジュンと秘密の友だち』) - 佐藤さんち…

『わんぱく天国ーー安針塚の子どもたちーー』紹介

ある四月の日曜日に、国道のバス停「渚橋」に小さなバスが停まり、水兵服を着た男の子が降りてきた。水兵帽には「大日本海洋少年団」の金文字。作者佐藤さとるさんご自身の少年時代を思わせる、その名も加藤馨くんです。 この作品は、時代と場所を昭和十年代…

お知らせ記事一覧

ごあいさつ - 佐藤さんちのふしぎ 目次(カテゴリー一覧) - 佐藤さんちのふしぎ

目次(カテゴリー一覧)

お知らせ記事一覧 - 佐藤さんちのふしぎ 「コロボックル物語」記事一覧 - 佐藤さんちのふしぎ 長編作品記事一覧 - 佐藤さんちのふしぎ

こびとたちの小ささ

「こびと」とひとくくりに言っても、その大きさ小ささは様々ですね。 アイヌのこびと伝説では、資料によって一寸法師のようなという表現もありますが、3尺(90センチ)、4尺(120センチ)くらい、という表現もあります。*1 佐藤さんが御父上から引き…

村上勉『コロボックルの小さな画集』紹介

佐藤さんと言えば、とくにコロボックルと言えば、絵は村上勉さん。もう切っても切れない結びつきです。 でも、最初からではなかったんですね。 タイプ印刷の私家版が出てすぐに講談社から刊行された『だれも知らない小さな国』には、若菜珪さんという画家が…

『ブドウ屋敷文書の謎』紹介

「コロボックル物語・番外編」と副題のついたこの小さな本は、2013年に刊行された『復刻私家版 だれも知らない小さな国』の付録として発行されました。佐藤さん85歳のとし、コロボックル物語最後の作品です。佐藤さんの著作権を管理する株式会社あかつ…

有川浩版コロボックル物語の紹介

有川浩版コロボックル物語 佐藤さんは1983年に第5巻で物語を完結させたあと、これ以上は続きを書けないと判断しました。けれど後年、コロボックル物語のファンでもある作家の有川浩さんと対談した際に、「ぼくはこの物語の続きを誰でも禁則さえ守れば書…

短編集『コロボックル童話集』紹介

コロボックルの登場する短編作品はいろいろな形で出版されていますが、講談社の青い鳥文庫に『コロボックル童話集』としてまとめられていますので、それに沿ってご紹介します。 まず、独立した短編二作があります。そのうちの一編、『コロボックルと紙のひこ…

『小さな人のむかしの話』と「読者への長い手紙」紹介

『小さな人のむかしの話』 これは別巻です。物語の続きではなくて、番外編です。歴史学者のツムジイが語ったたくさんの昔話を、弟子のクヌギノヒコ=ノッポかだれかが書きとって、それをママ先生が清書したなかから、筆者(佐藤さん)が選び出して読みやすい…

『小さな国のつづきの話』について(2)すみれの髪

佐藤さんのしめくくり ヒイラギノヒコとはべつに、佐藤さんもこの第5巻について語っています。「あそこから先を書いていくとね、コロボックルを受け入れる、つまり「トモダチ」になる人間がどんどん増えてしまうんだ。そうすると、現実の方が、世の中の方が…

『小さな国のつづきの話』について(1)

佐藤さんの大冒険 これはもともと『へんな子』という短編でした。それを長編に展開したこの巻では、じつはたいへんな挑戦が行われています。正子の勤める町の図書館の児童室には、このコロボックル物語の第一巻から第四巻までがちゃんとそろっているんです!…

『小さな国のつづきの話』紹介

第5巻の主役はふたり。 人間側の主役になる「ヘンな子」、杉岡正子さんのことから物語は始まります。高校を卒業して町の図書館に務めはじめた正子は、「どこがどうヘンなのかはなかなか説明しにくい」のだけれど、みんなに「ヘンな子」だと言われる、ちょっ…

『ふしぎな目をした男の子』について(2)

ヒロシとタケル この巻でも、男の子たちは学年を越えて仲良くなっています。ヒロシはタケルより五つか六つ年上だけど、とっても面倒見がいいんですよね。あ、そういえばこの巻には女性がほとんど出て来ない。タケルのお祖母さんとお母さんがちらっと姿を見せ…

『ふしぎな目をした男の子』について(1)歴史と環境

あたらしいコロボックルたちとあたらしい人々 1971年刊行のこの第四巻に、せいたかさん一家は登場しません。コロボックルも、おなじみの顔は、世話役のヒイラギノヒコのほかには、クリノヒコ=風の子の仲間のふたり、今はクマンバチ隊隊長のスギノヒコ=…

『ふしぎな目をした男の子』紹介

オキテとツムジイ、そしてタケル サクランボ事件によって、コロボックルの掟が変わりました。だれでもひとりだけなら人間のトモダチを作って良い、ということになったのです。このとき、小山の裏のやぶのどびんの家で、古いむかしのことを調べている学者のじ…

『だれも知らない小さな国』について(3)道路が山をつぶす

物語の舞台 現行の講談社版の刊本では、この作品の舞台、つまりコロボックルの住む「小山」がどこにあるかは書かれていません。「はじめに」で「日本のすぐとなり」と言及されているだけです。 けれどタイプ印刷で刊行された私家版の「はじめに」では、「東…

『星からおちた小さな人』について

オキテ 1965年刊の第三巻『星からおちた小さな人』でも、描かれるのは発展していくコロボックルの社会と、その中で活躍するコロボックルの若者たちです。 試験飛行の事故に始まった物語は、コロボックルのオキテの中の一条をめぐって動いていきます。そ…

『星からおちた小さな人』紹介

今度は事件です! 「だれかが、高い空の上から町を見おろしていた。」 コロボックルの住む小山のあるその町の地形が、上空からの視点で語られています。今日はコロボックルが開発した空とぶ機械の新型、はばたき式飛行機の試験飛行なのです。背中に付けた羽…

「コロボックル物語」記事一覧

「コロボックル物語」 「コロボックル物語」紹介 - 佐藤さんちのふしぎ 『だれも知らない小さな国』紹介 - 佐藤さんちのふしぎ 『だれも知らない小さな国』について(1) - 佐藤さんちのふしぎ 『だれも知らない小さな国』について(2)三つの初恋 - 佐藤…

『豆つぶほどの小さないぬ』について

本来の物語世界 佐藤さんは1985年版のあとがきで、小人の話を書こうと思いたったとき、当初思い描いたのはこの作品のような世界だった、と書いています。「ようやく本来の物語世界を得た思い」と。つまり第一巻の『だれも知らない小さな国』は、第二巻で…

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『豆つぶほどの小さないぬ』紹介

「矢じるしの先っぽの国、コロボックル小国」にある「せいたかさん」の家に、みんなの世話役になったヒイラギノヒコが招かれてやってきます。 「手紙には、ききたいことがあるって書いてあったけど、いったいなんだい。」「むかし、きみたちが飼っていたとい…

『だれも知らない小さな国』について(2)三つの初恋

前の記事でも触れましたが、この作品にはふたつの物語があって、ひとつは小人たちとの出会いと再会、そしてもうひとつが自分にとってとくべつなひとになる女の子との出会いと再会です。 最初にこれを読んだときには、なにしろ子どもですから、女の子との再会…

『だれも知らない小さな国』について(1)

ここからは、その作品はもう読んだよ、という方々に向けたお喋りです。 デビュー まだ無名だった佐藤さとるさんがこの長編作品を書き上げたのは1958年、昭和33年でした。30歳の年の年末です。翌年タイプ印刷で自費出版されると、すぐに講談社から正…

ごあいさつ

佐藤さとるさんをご存じですよね。日本で最初の長編ファンタジー作品、『だれも知らない小さな国』を書いた児童文学作家です。 ぼくは十歳くらいのころこの本を読んで大好きになり、くりかえし読みふけって、もう大人になってからも何度も読み返しては愉しん…