佐藤さんちのふしぎ

童話作家・佐藤さとる と作品たち

2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

有川浩版コロボックル物語の紹介

有川浩版コロボックル物語 佐藤さんは1983年に第5巻で物語を完結させたあと、これ以上は続きを書けないと判断しました。けれど後年、コロボックル物語のファンでもある作家の有川浩さんと対談した際に、「ぼくはこの物語の続きを誰でも禁則さえ守れば書…

短編集『コロボックル童話集』紹介

コロボックルの登場する短編作品はいろいろな形で出版されていますが、講談社の青い鳥文庫に『コロボックル童話集』としてまとめられていますので、それに沿ってご紹介します。 まず、独立した短編二作があります。そのうちの一編、『コロボックルと紙のひこ…

『小さな人のむかしの話』と「読者への長い手紙」紹介

『小さな人のむかしの話』 これは別巻です。物語の続きではなくて、番外編です。歴史学者のツムジイが語ったたくさんの昔話を、弟子のクヌギノヒコ=ノッポかだれかが書きとって、それをママ先生が清書したなかから、筆者(佐藤さん)が選び出して読みやすい…

『小さな国のつづきの話』について(2)すみれの髪

佐藤さんのしめくくり ヒイラギノヒコとはべつに、佐藤さんもこの第5巻について語っています。「あそこから先を書いていくとね、コロボックルを受け入れる、つまり「トモダチ」になる人間がどんどん増えてしまうんだ。そうすると、現実の方が、世の中の方が…

『小さな国のつづきの話』について(1)

佐藤さんの大冒険 これはもともと『へんな子』という短編でした。それを長編に展開したこの巻では、じつはたいへんな挑戦が行われています。正子の勤める町の図書館の児童室には、このコロボックル物語の第一巻から第四巻までがちゃんとそろっているんです!…

『小さな国のつづきの話』紹介

第5巻の主役はふたり。 人間側の主役になる「ヘンな子」、杉岡正子さんのことから物語は始まります。高校を卒業して町の図書館に務めはじめた正子は、「どこがどうヘンなのかはなかなか説明しにくい」のだけれど、みんなに「ヘンな子」だと言われる、ちょっ…

『ふしぎな目をした男の子』について(2)

ヒロシとタケル この巻でも、男の子たちは学年を越えて仲良くなっています。ヒロシはタケルより五つか六つ年上だけど、とっても面倒見がいいんですよね。あ、そういえばこの巻には女性がほとんど出て来ない。タケルのお祖母さんとお母さんがちらっと姿を見せ…

『ふしぎな目をした男の子』について(1)歴史と環境

あたらしいコロボックルたちとあたらしい人々 1971年刊行のこの第四巻に、せいたかさん一家は登場しません。コロボックルも、おなじみの顔は、世話役のヒイラギノヒコのほかには、クリノヒコ=風の子の仲間のふたり、今はクマンバチ隊隊長のスギノヒコ=…

『ふしぎな目をした男の子』紹介

オキテとツムジイ、そしてタケル サクランボ事件によって、コロボックルの掟が変わりました。だれでもひとりだけなら人間のトモダチを作って良い、ということになったのです。このとき、小山の裏のやぶのどびんの家で、古いむかしのことを調べている学者のじ…

『だれも知らない小さな国』について(3)道路が山をつぶす

物語の舞台 現行の講談社版の刊本では、この作品の舞台、つまりコロボックルの住む「小山」がどこにあるかは書かれていません。「はじめに」で「日本のすぐとなり」と言及されているだけです。 けれどタイプ印刷で刊行された私家版の「はじめに」では、「東…

『星からおちた小さな人』について

オキテ 1965年刊の第三巻『星からおちた小さな人』でも、描かれるのは発展していくコロボックルの社会と、その中で活躍するコロボックルの若者たちです。 試験飛行の事故に始まった物語は、コロボックルのオキテの中の一条をめぐって動いていきます。そ…

『星からおちた小さな人』紹介

今度は事件です! 「だれかが、高い空の上から町を見おろしていた。」 コロボックルの住む小山のあるその町の地形が、上空からの視点で語られています。今日はコロボックルが開発した空とぶ機械の新型、はばたき式飛行機の試験飛行なのです。背中に付けた羽…

「コロボックル物語」記事一覧

「コロボックル物語」 「コロボックル物語」紹介 - 佐藤さんちのふしぎ 『だれも知らない小さな国』紹介 - 佐藤さんちのふしぎ 『だれも知らない小さな国』について(1) - 佐藤さんちのふしぎ 『だれも知らない小さな国』について(2)三つの初恋 - 佐藤…

『豆つぶほどの小さないぬ』について

本来の物語世界 佐藤さんは1985年版のあとがきで、小人の話を書こうと思いたったとき、当初思い描いたのはこの作品のような世界だった、と書いています。「ようやく本来の物語世界を得た思い」と。つまり第一巻の『だれも知らない小さな国』は、第二巻で…

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『豆つぶほどの小さないぬ』紹介

「矢じるしの先っぽの国、コロボックル小国」にある「せいたかさん」の家に、みんなの世話役になったヒイラギノヒコが招かれてやってきます。 「手紙には、ききたいことがあるって書いてあったけど、いったいなんだい。」「むかし、きみたちが飼っていたとい…

『だれも知らない小さな国』について(2)三つの初恋

前の記事でも触れましたが、この作品にはふたつの物語があって、ひとつは小人たちとの出会いと再会、そしてもうひとつが自分にとってとくべつなひとになる女の子との出会いと再会です。 最初にこれを読んだときには、なにしろ子どもですから、女の子との再会…

『だれも知らない小さな国』について(1)

ここからは、その作品はもう読んだよ、という方々に向けたお喋りです。 デビュー まだ無名だった佐藤さとるさんがこの長編作品を書き上げたのは1958年、昭和33年でした。30歳の年の年末です。翌年タイプ印刷で自費出版されると、すぐに講談社から正…

ごあいさつ

佐藤さとるさんをご存じですよね。日本で最初の長編ファンタジー作品、『だれも知らない小さな国』を書いた児童文学作家です。 ぼくは十歳くらいのころこの本を読んで大好きになり、くりかえし読みふけって、もう大人になってからも何度も読み返しては愉しん…

「コロボックル物語」紹介

佐藤さとるさんと言えば、なんといってもまずは「コロボックル物語」。 小人たちのお話ですが、彼らはふしぎな世界の住人ではなく、夢のような妖精でもありません。元気でかしこい小人の一族が、現代の日本のふつうの町で、生きて、暮らして、活躍します。 …

『だれも知らない小さな国』紹介

「二十年近い前のことだから、もうむかしといっていいかもしれない。僕はまだ小学校の三年生だった。その年の夏休みには、町の子どもたちのあいだで・・・・」 この書き出しはもうぼくの頭のなかに住み着いていて、隅の方からときどき起きだして来ては、ぼくにじ…