佐藤さんちのふしぎ

童話作家・佐藤さとる と作品たち

『小さな国のつづきの話』について(2)すみれの髪

佐藤さんのしめくくり

 ヒイラギノヒコとはべつに、佐藤さんもこの第5巻について語っています。
「あそこから先を書いていくとね、コロボックルを受け入れる、つまり「トモダチ」になる人間がどんどん増えてしまうんだ。そうすると、現実の方が、世の中の方がひずんでしまう。ある種、狂気の世界へはいって行ってしまう。だからやめた。」(『コロボックルの世界へ』所収のインタビュー)

 「コロボックル物語」という本が、コロボックルたちといっしょに存在する世界を舞台に物語を紡いでいくのは、考えただけでも難しそうですよね。
 けれど『図書館戦争』の有川浩がその難題に挑戦しました。それが『だれもが知ってる小さな国』ですが、その話はまたいずれ。

 

すみれ

 ところで、チイサコ族の髪の毛の色はすみれ色、ってずいぶんきばつな設定だと思いませんか。生まれつき髪がすみれ色っていう人は世界中探してもたぶんいないし、髪をすみれ色に染める人もあまり多くないですよね、コスプレ会場以外では。この作品は『エヴァンゲリオン』以前のものですから、すみれ色の髪はコスプレとは関係ないでしょうし。

 佐藤さんがコロボックルを発想するもとになったものはたくさんあったそうですが、そのなかに十代で出会った夏目漱石の俳句があるそうです。
 「菫程な小さき人に生まれたし」
 だからすみれの髪の旅人なんですね。すみれほどな小さな人、という表現は漱石の有名な短編小説『文鳥』にも出て来ます。

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