ヒロシとタケル
この巻でも、男の子たちは学年を越えて仲良くなっています。ヒロシはタケルより五つか六つ年上だけど、とっても面倒見がいいんですよね。あ、そういえばこの巻には女性がほとんど出て来ない。タケルのお祖母さんとお母さんがちらっと姿を見せるだけだ。佐藤さんの作品としては珍しいですね、短編ならともかく。
男どうしの付き合い
じつはこの記事を書くために『ふしぎな目をした男の子』を何度目かに読み返して、ぼくは感動してしまいました。
何に感動したのか。
この巻には女性が出てこない、その代わりに男性どうしの人間関係がたくさん描かれているんです。それがとっても魅力的なんですね。
ツムジイとタケル。
タケルとその父。
タケルとヒロシ。
ヒロシとその祖父。
トギヤと息子のツムジ。
そうそう、気難しい歴史学者のツムジノヒコと、若い政治家であるヒイラギノヒコの関わりもある。
親子やそれに類した関係でも、親側は若い者を見守りながら、その人格の独立と自由を尊重しています。子の側は、親や年上の人物の知恵や経験に敬意を払い、礼儀を守ります。そしてどちらも、自分の言うべきことやるべき事は、妥協せずに実行します。
いいなあ、と思ったんですね。タケルとヒロシが、お互いをどう呼ぶかで会話するくだりなんて、あるべき人間関係をさぐって象徴的です。