佐藤さんちのふしぎ

童話作家・佐藤さとる と作品たち

『小さな国のつづきの話』紹介

 第5巻の主役はふたり。
 人間側の主役になる「ヘンな子」、杉岡正子さんのことから物語は始まります。高校を卒業して町の図書館に務めはじめた正子は、「どこがどうヘンなのかはなかなか説明しにくい」のだけれど、みんなに「ヘンな子」だと言われる、ちょっと変わった「おねえさん」。じつは正子は、自分には小さな守り神がついてくれていると空想し、実際にその姿を見たことがあるとも思っています。
 コロボックル側の主役はスギノヒメ=ツクシ。度胸のいいむすめコロボックルで、この子もまわりからはちょっとかわりだねだと思われています。それもそのはず、まだ内緒だけれどふかく心に決めた目標があって、それはコロボックルがまだだれも行ったことのない遠くまで、外国までも旅する旅行家になること!
 目標を実現するためにツクシは工夫と努力を惜しみません。その努力のなかでツクシは正子を知り、どこかふしぎな落ち着きのある正子と「トモダチ」になろうとします。
 でも、今回の物語は、このふたりのあいだだけのおはなしではありません。

 正子は、第3巻で登場したおちゃめさん、今はチャムちゃんと呼ばれるせいたかさんのむすめさんの親友なのです。せいたかさん一家が小山のある町から「すこしはなれた大きな町」に住まいを移したあと、その町の女子高でふたりは親しくなりました。そしてチャムちゃんの弟のムックリくんは、町の図書館の児童室で正子と知り合っています。
 ムックリくんは、大学4年生のイサオにも親しくしてもらっています。イサオは「ミツバチ事件」の主役「オチャ公」で、あれ以来お姉さんのチャムちゃんとも親しくしていましたから。
 そしてそのイサオは、あの事件でクルミノヒコ=ミツバチの「トモダチ」になり、十年以上たった今はもうコロボックル「みんなのトモダチ」として、小山の秘密もおおよそ知っている立場です。

 さあ、前巻とはうってかわってこの巻では、コロボックルのまわりの重要な人々がたがいに知り合い、かかわりあいます。コロボックルたちが新しい時代を迎えるのにあわせて、人間たちのかかわり方も新しくなっていくようです。

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