佐藤さんちのふしぎ

童話作家・佐藤さとる と作品たち

『ブドウ屋敷文書の謎』紹介

 「コロボックル物語・番外編」と副題のついたこの小さな本は、2013年に刊行された『復刻私家版 だれも知らない小さな国』の付録として発行されました。佐藤さん85歳のとし、コロボックル物語最後の作品です。佐藤さんの著作権を管理する株式会社あかつきから限定千部で出版されたものですから、もう入手は難しいでしょうけれども、ぼくは図書館で借りて読みました。

 本には「前説」があって、そこで佐藤さんは説明しています。この『ブドウ屋敷文書の謎』の作者は櫟・野歩というコロボックルで、歴史学者のウメのヒコ=ツムジイの一番弟子、本名クヌギのヒコ=ノッポ。コロボックルの社会で初めての出版物になるはずの本だそうです。*1

 内容は、コロボックルの町の書庫に保存されている古文書「ブドウ屋敷文書」をツムジイとノッポが研究した成果の報告で、なんと文書の書かれたのは三百年前。
 江戸時代初期に徳川家康の家臣となった三浦按針(ウィリアム・アダムス)は(現・横須賀市の)逸見に領地をもらっていて、子孫があとを継いでいました。そして曾孫のジャンとトモダチになったのが、当時のモチのヒコ=羽根無、文書の筆者です。彼は何を記録したのでしょうか。

 佐藤さんの書いた巻末の「解説」では、「ガリバー旅行記」に出てくる日本の土地ザモスキとの関連についても触れられていて、なるほど、です。(これについてはウィキペディアにも解説があります。*2)

*1 コロボックルの名前の正式名部分は、これまですべてカタカナでウメノヒコのように書かれていましたが、この冊子では、ヒコやヒメの前の「ノ」がひらがなに揃えられて、ウメのヒコのように書かれています。

*2 ガリヴァー旅行記における日本 - Wikipedia

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